AIナレーションの作り方——原稿から音量まで10の手順
自分の声を出したくない。合成音声で語りを作れますが、出来を決めるのは声の種類ではなく原稿です。話し言葉になっていない原稿をそのまま読ませると、内容がよくても途中で聞かれなくなります。この記事では、尺から文字数を決めるところから、音を消して確かめるところまでを10手順で示します。人柄で選ばれる商売など、合成音声にしないほうがよい場合も最後にまとめます。
目次
AIナレーション(合成音声で作る語り)の出来は、声選びではなく原稿で決まります
声を選び直しても、原稿が書き言葉のままなら不自然さは消えません。 手を入れる順番は、原稿が先、声はあとです。
合成音声が「機械っぽい」と感じられる原因は、多くの場合その声の質ではありません。原稿が読み物の文章のままだからです。「〜となります」「〜における」といった書き言葉は、人が読み上げても不自然に聞こえます。合成音声はそれをそのまま、抑揚をつけずに読みます。
顔を出さない方法の選び方そのものは顔を出さずに動画を出す4つの方法に整理しています。この記事は、そこで「撮影せずに作る」を選んだ人が、今日1本ぶんの語りを用意するための手順です。
全体の流れ(10の手順)
先に道具を選びたくなりますが、原稿が先です。 道具を決めるのは8番目で足ります。
| # | やること |
|---|---|
| 1 | 動画の尺を決める |
| 2 | 尺から総文字数を出す |
| 3 | 言いたいことを1つに絞って原稿を書く |
| 4 | 声に出して読み、話し言葉に直す |
| 5 | 1文を短く割り、1カット1文にする |
| 6 | 読みが割れる語をひらく |
| 7 | 文の切れ目で行を分け、間を作る |
| 8 | 道具を4つの基準で選び、音声を作る |
| 9 | 通しで1回聞いて、音量を整える |
| 10 | 画面に出す文字を付け、音を消して見る |
この記事は、この順番どおりに進めます。
手順1〜2:尺から総文字数を決める
先に文字数の上限を決めます。 これをやらないと、原稿を書いたあとに「尺に入らない」で全部書き直しになります。
基準にする話速は1秒あたり5.9字です。当社が台本を作るときにこの速度でカットの秒数を逆算していて、合成音声の原稿でもそのまま使えます。
手順1:動画の尺を決める。 30秒か60秒から選んでください。迷ったら30秒です。短いほうが最後まで聞かれます。
手順2:尺から総文字数を出す。 計算はこうです。
1カットの秒数 = そのカットのセリフの文字数 ÷ 5.9 + 0.8秒(息継ぎ)
| セリフの文字数 | カットの秒数 |
|---|---|
| 12字 | 約2.8秒 |
| 20字 | 約4.2秒 |
| 30字 | 約5.9秒 |
| 40字 | 約7.6秒 |
| 42字 | 約7.9秒(1カットの上限) |
1カットは長くて8秒にしてください。それを超えると、同じ画のまま話が続いて飽きられます。上の式で逆算すると、1カットに入るセリフは42字が上限です。動きのない画なら3秒以内、つまり13字前後に抑えます。
尺ぜんぶの文字数は、息継ぎのぶんを引いてから計算します。
| 尺 | カット数の例 | 総文字数の目安 |
|---|---|---|
| 15秒 | 4 | 約70字 |
| 30秒 | 6 | 約150字 |
| 60秒 | 10 | 約300字 |
※ 上の式(5.9字/秒・息継ぎ0.8秒)から出した計算値です。カット数が増えれば息継ぎも増えるので、文字数は減ります。
手順3〜5:原稿を話し言葉に直す
書いた原稿を、声に出して読める形に直します。 ここが仕上がりを一番大きく変えます。
手順3:言いたいことを1つに絞って原稿を書く。 1本に入れるメッセージは1つだけです。「今日はこれだけ覚えて帰ってほしい」を1つ決めて、それ以外を落とします。詰め込むほど何も残りません。
手順4:声に出して読み、話し言葉に直す。 実際に読んで、つっかえた場所を書き換えます。直す観点は3つです。
- 語尾を話し言葉にする。「〜になります」→「〜なんです」「〜してみてください」
- 専門用語を、見ている人がそのまま真似できる言葉に置き換える。「表面のキューティクルを閉じる」→「表面を整える」
- 前置きを削る。「みなさんこんにちは」「今日は〇〇について話します」は全部消します。1文目から本題に入ります
手順5:1文を短く割り、1カット1文にする。 長い説明は次のカットに割ります。1つのカットに2文入れると、画面と話がずれていきます。
読点でつないだ長い文は、必ず切れます。「〜で、〜なので、〜すると」の形を見つけたら、そこで文を終わらせてください。
手順6:読みが割れる語をひらく
合成音声は漢字を読み間違えます。 これは道具の良し悪しではなく、日本語の性質です。
手順6:読みが割れる語をひらく。 生成する前に、原稿を上から見て次の語を探します。
| 種類 | 例 | 対処 |
|---|---|---|
| 数字+助数詞 | 9割・1日・3か月 | ひらがなにする(きゅうわり)か、読みを指定する |
| 同じ表記で読みが2つある語 | 一日・角・下手・市場 | ひらがなにするか、別の言葉に言い換える |
| 固有名詞 | 店名・商品名・人名 | ひらがなにして、画面の文字だけ漢字で出す |
| 略語・アルファベット | SNS・DM | 読み方どおりに書く(エスエヌエス) |
読み仮名を別に指定できる仕組みがあるなら、そちらを使ってください。 表示は漢字のまま、読みだけを直せます。表示まで全部ひらがなにすると、画面に出す文字が読みにくくなるためです。
なお、画面に出す文字のほうは漢字をひらくのが正解です(「出来る」→「できる」、「事」→「こと」)。読み上げの都合と、読みやすさの都合が、たまたま同じ方向を向きます。
手順7:間は原稿の改行で作る
間は音声の設定ではなく、原稿の改行で作ります。 設定でまとめて空けると、文の途中にも間が入って不自然になります。
手順7:文の切れ目で行を分ける。 1文=1行にして、カットが変わる場所で1行空けます。合成音声は行の切れ目で息を置くので、これだけで間が整います。
間について守ることは2つです。
- 間を置くのは、話が切り替わるところだけ。 文の途中に間が入ると、読み間違えて止まったように聞こえます
- 冒頭に間を作らない。 0秒から声が出ている状態にします。最初の1秒が無音だと、その時点で送られます
生成した音声を聞いて「全体にもたついている」と感じたら、無音の部分を詰めて再生速度を少し上げてください。道具によっては素の読み上げが遅く、そのままでは尺に収まりません。目安は先ほどの5.9字/秒です。原稿の文字数を音声の長さ(秒)で割れば、いま何字/秒かはすぐ出ます。
手順8〜9:道具を選び、音声を作って、音量を整える
道具は「◯◯が一番いい」では選べません。 原稿をそのまま読ませられるかで選びます。
手順8:次の4点を満たす道具を選び、音声を作る。
- 原稿を一字一句そのまま読むか。 要約したり言い換えたりする方式だと、練った言い回しが崩れます。表現に気をつけて選んだ言葉も勝手に変わります
- 読み仮名を別に指定できるか。 手順6で見つけた語を直せます
- 間の長さを調整できるか。 行や記号で間を作れるか
- 商用利用が許可されているか。 仕事で使うなら必ず利用条件を確認してください
手順9:通しで1回聞いて、音量を整える。 部分だけ聞いて判断しないでください。通しで聞くと、読み間違いと不自然な間はほぼここで見つかります。
音の整え方は3点です。
- 語りが主、音楽は従。 音楽はあとから足し、語りが聞き取れる大きさまで下げます
- スマホのスピーカーで、音量を小さめにして聞く。 イヤホンで聞くと必ず聞き取れてしまいます
- 効果音は足さないほうが無難。 当社が分類して数えたリールでは、手順を教える回19本のうち効果音を使っていたものは0本でした。一方、日常の記録型は8本中7本が使っています。型によって正解が逆になるので、真似する相手を1本決めてから合わせてください
手順10:画面に出す文字を付けて、音を消して見る
リールの大半は音を出さずに見られます。 文字だけで意味が通らなければ、語りの出来は関係ありません。
手順10:画面に出す文字を付け、音を消して最初から見る。 意味が取れなければ、文字を直します。
文字の規格は、当社が分析したリールで型を問わず一致していたものがあります。
画面に出す文字の規格(当社の検証で使っているもの)
項目 値 見た目 白い太ゴシック体+黒フチ 位置 中央 1画面の文字数 15字前後・2行まで 1行の長さ 全角10〜12字以内 強調 1色だけ。キーワードのみ 出すタイミング 声と同時に出す ※ 当社の制作で使っている設定値です。業界標準ではありません。
改行は自分で入れてください。 意味の切れ目(文節)で割ります。「逆効果か/も」のように語の途中で割れているのは設計ミスです。自動で折り返るに任せると、必ずここが崩れます。
冒頭は文字でも支えます。当社が調べた勝ったリール26本のうち25本が、0秒の位置に大きな文字を置いていました。語りの1文目と同じ言葉を、大きく出してください。
合成音声が向かない場合
次に当てはまるなら、合成音声にしないほうが結果が良くなります。 手間を減らすつもりが、指名される理由を消してしまうためです。
| 内容 | 合成音声 | 代わりにどうするか |
|---|---|---|
| 人柄・相性で選ばれている商売 | 向かない | 顔は出さず、声だけ自分にする。手元を写して自分で語る |
| 感情の起伏が中身の回(失敗談・お礼・思い) | 向かない | 本人が話す。抑揚が内容そのものなので、平らになると意味が消える |
| 本人の指名が売り(教える人・作る人が商品) | 向かない | 本人の声で。声も「その人」の一部です |
| 自分や誰かの体験を語る回 | 向かない | 語り手が誰か分からない体験談は、信頼されません |
| 固有名詞・専門用語だらけの原稿 | 条件つき | 読み仮名を指定できる道具でなければ避ける |
| 手順・情報・比較が中身の回 | 向く | この記事の手順どおりで問題ありません |
とくに1つ目が大きい。 声を合成にすると、動画から「誰がやっているか」がほぼ消えます。手元だけを写して自分の声で語る形なら、顔を出さずに人柄は残ります。顔を出す・出さないと、声を出す・出さないは別の判断です。
使うと決めた場合も、次の2点は確認してください。
- 実在の人物と誤認させる使い方をしない。 他人の声に似せる、本人が話しているように見せる、といった形は避けます
- AIで作った音声である旨を出すかどうかを決めておく。 出す場所(キャプション・画面の隅)も先に決めます
自動化しても投稿が続かない場合は、原因が語りではなく企画側にあります。どこまでが道具で減る作業で、どこからが残る判断かは動画編集をAIで自動化すると、どこまで時間が減るのかに整理しています。
まとめ
- 合成音声の出来を決めるのは声の種類ではなく原稿。直す順番は原稿が先、声はあと
- 先に文字数の上限を決める。1カットの秒数=文字数÷5.9+0.8秒。1カット8秒まで=セリフ42字が上限
- 尺の目安は30秒で約150字・60秒で約300字(カット数が増えれば減る)
- 原稿は声に出して読んで直す。語尾を話し言葉に、専門用語を素人の言葉に、前置きを全部削る
- 漢字は読み間違えられる。数字+助数詞・同じ表記で読みが2つある語・固有名詞をひらくか、読み仮名を別に指定する
- 間は原稿の改行で作る。1文=1行、カットの変わり目で1行空ける。冒頭に無音を作らない
- 道具は一字一句そのまま読むか/読み仮名を指定できるか/間を調整できるか/商用利用できるかの4点で選ぶ
- 最後は音を消して最初から見る。文字だけで意味が通らなければ、語りの出来は関係ない
- 人柄で選ばれている商売・感情が中身の回・本人の指名が売りの場合は、合成音声にしない。顔を出さずに声だけ自分、という形が残っている