リールの平均再生数は基準にならない——292本の実測
「リールの平均再生数はどれくらいか」を調べても、自分の投稿が良かったのか悪かったのかは判定できません。リール292本を全件分析したところ、同じアカウントの中だけで再生数が最大245倍まで割れていたからです。この記事では、平均の代わりに使う2つの基準——アカウント内の中央値比と、フォロワー数で割ったリーチ率——の出し方を手順で書きます。
目次
結論:平均再生数を探すのは、今日でやめてください
「リールの平均再生数」という基準値は、あなたの投稿の判定には使えません。 理由は2つあります。
1つめ。当社が確認した範囲では、出回っている平均値に算出の母数が書かれていませんでした。 この記事を書くにあたって基準値の出典を探しましたが、元データにたどり着けるものが見つかりません。引用元をたどると別の記事に行き着き、その記事もまた別の記事を引いている、という状態です。
2つめが本質です。仮に正しい平均値があったとしても、再生数という数字は平均が意味を持つ形をしていません。 当社がリール292本を全件分析したところ、同一アカウントの中だけで最大245倍の開きがありました。発信者も商材もフォロワー数も同じ条件でこれだけ割れる数字を、他人の平均と比べても、次に何をすればいいかは出てきません。
代わりに使う基準は2つです。自分のアカウント内の中央値比と、フォロワー数で割ったリーチ率。以下、出し方を書きます。
「平均再生数」を探す人が、本当に知りたいこと
平均再生数を検索するとき、頭の中にある問いは4つのどれかです。 そのどれもが、平均以外の数字でしか答えられません。
| 本当の問い | 平均では答えられない理由 | 代わりに使う数字 |
|---|---|---|
| うちの再生数は低いのか | 比較相手のフォロワー規模・投稿本数・アカウントの年齢が違う | 自分のアカウント内の中央値 |
| この1本は良かったのか | 平均は1本の大当たりで簡単に動く | 中央値比(2.5倍以上/0.4倍以下) |
| フォロワー数のわりに見られているか | 平均に規模の情報が入っていない | リーチ率(再生数 ÷ フォロワー数) |
| 憧れのアカウントと比べてどうか | 相手の平均も同じ理由で使えない | 相手のアカウント内の中央値比 |
共通しているのは、比較を「自分の中」か「相手の中」に閉じている点です。 アカウントをまたいだ絶対値の比較は、条件が揃わないので成立しません。
実測:同じアカウントの中で、再生数は245倍割れた
平均が使えない理由は、実際の分布を見ると分かります。
調査の内容
- 調査対象:日本国内のInstagramアカウント10件が投稿したリール292本(期間内の全件。抜き取りではありません)
- 期間:2025年10月28日〜2026年6月28日(約8ヶ月)
- 判定方法:そのアカウント内の再生数の中央値との比。中央値の2.5倍以上を「伸び」、0.4倍以下を「沈み」とし、あいだは判定しない
- 判定結果:伸び49本(17%)/中間211本(72%)/沈み32本(11%)
- 分かったこと:同一アカウント内で最大245倍の開き(中央値の45.7倍〜0.19倍)。開きの中央値は57倍で、10アカウント中9アカウントが10倍を超える開きを持っていました
- 取得できない指標:保存数・プロフィール遷移・DM・予約は公開情報として取得できないため対象外
- 別途、Instagramアカウント1,314件・16,752投稿を収集し、うち619投稿を勝ち負けラベル付きで分析しています
ここで平均を出すとどうなるか。 上位17%が平均を大きく押し上げます。すると、72%を占める中間の投稿の多くが平均を下回ります。「平均以下だったから失敗」という読み方をすると、普通に回っている投稿までまとめて失敗判定になります。
しかも、この開きはアカウントの実力差ではありません。同じ人が、同じ商材で、同じ時期に出した投稿のあいだで起きています。 何が割れ目になっていたかはショート動画が伸びない本当の理由に整理しました。
平均ではなく中央値を使う
中央値は、再生数を大きい順に並べたときのちょうど真ん中の値です。 投稿が偶数本なら、真ん中2本の平均を取ります。
平均との違いはこれだけです。
| 平均 | 中央値 | |
|---|---|---|
| 大当たり1本の影響 | 大きく動く | ほとんど動かない |
| 表しているもの | 全体の合計を頭数で割った値 | その人の平常運転 |
| 再生数で使えるか | 使えない(分布が偏っている) | 使える |
中央値が表すのは「いつもの自分」です。 基準に必要なのは、いつもの自分より上か下かであって、全体の合計ではありません。
手順:自分のアカウントの基準を作る
この6手順で、他人の数字を一切使わずに基準ができます。
- 直近のリールの再生数を書き出す。 リールだけにします(写真投稿・カルーセルと混ぜない。配信のされ方が違います)
- 大きい順に並べる
- 真ん中の値を取る。 これが自分の中央値です
- 各投稿の再生数 ÷ 中央値 を計算する。これが中央値比です
- 2.5倍以上と0.4倍以下だけを抜き出す。 真ん中は見ません
- 月に1回、中央値を出し直す
手順5で真ん中を捨てるのが要点です。微妙な差から学ぼうとすると、たまたまを法則だと思い込みます。
注意点が3つあります。
- 本数が少ないうちは基準を作らない。 数本しかない段階の中央値は、1本追加するだけで動きます。今回の調査でも、期間内の投稿本数が少ないアカウントは対象から外しています
- 古すぎる投稿を混ぜない。 開設直後と現在では配信のされ方が違うので、同じ物差しに乗りません
- バズった1本を除外しなくてよい。 平均なら除外を検討するところですが、中央値はそもそも引っ張られません。除外の判断が要らないことが、中央値を使う実利です
フォロワー数で割る——リーチ率
規模の違うアカウントと並べたいときだけ、リーチ率を使います。
- リーチ率 = その投稿の再生数 ÷ フォロワー数
読み方に2つ条件があります。
1つめ。この値は1.0(100%)を超えることがあります。 リールはフォロワー以外にも配信されるためです。「率」という名前ですが、実際はフォロワー数の何倍に届いたかという倍率として読んでください。1.0を超えたら、フォロワーの外に出たということです。
2つめ。目安の数値は書きません。 当社は出典にたどり着ける基準値を見つけられませんでした。見つけられなかったものを、それらしい数字にして配ることはしません。リーチ率は他人と比べる数字ではなく、自分の推移を見る数字として使ってください。
使い分けは次のとおりです。
| 比べたいもの | 使う数字 |
|---|---|
| この1本 と 自分の平常運転 | 中央値比 |
| 今月 と 先月 | 中央値そのものの推移 |
| 自分 と 規模の違うアカウント | リーチ率 |
| 型Aの投稿 と 型Bの投稿 | 型ごとに分けた中央値比 |
他人のアカウントも、中央値比なら計算できる
憧れのアカウントを分析するときも、平均は使いません。 再生数が表示されていれば、相手の投稿を並べて中央値を出し、中央値比を計算できます。相手の中で何が当たっているかは、これで読めます。
ただし読めるものには限界があります。
| 指標 | 自分のアカウント | 他人のアカウント |
|---|---|---|
| 再生数・いいね・コメント | 取れる | 取れる(表示されている場合) |
| 保存数・プロフィール遷移 | 取れる(インサイト) | 取れない |
| DM・予約・来店 | 一部のみ | 取れない |
「あのアカウントは保存率が高いから伸びている」と書いてある記事があれば、その時点で根拠を疑ってください。 他人の保存数は公開されていません。当社が292本を分析したときも、使ったのは再生数・いいね・コメントの3つだけです。
再生数より先に見る数字がある
再生数は結果であって、原因ではありません。 原因側にいちばん近いのは平均視聴時間です。
自社アカウントのリール23本(再生数7千〜128万)を見ると、こう分かれました。
| 平均視聴時間 | |
|---|---|
| 伸びた回 | 16〜21秒 |
| 沈んだ回 | 7〜12秒 |
さらに、冒頭で離脱した割合が50%を超えた回は、例外なく沈んでいました。
再生数の基準を作る目的は、順位をつけることではなく直す場所を決めることです。中央値比で「沈み」に入った回が見つかったら、次に見るのは平均視聴時間と冒頭の離脱率になります。指標ごとの役割分担は投稿の成果を数字で見るに整理しました。
平均値を出してよくなる条件
母数が十分にあり、分布が偏っていないときだけです。 再生数でこの条件が揃うことは、実務ではほとんどありません。
当社自身も同じ規律で運用しています。投稿実績のデータが揃っているのは2026年8月時点で32本しかないため、成果の平均値は公表していません。 数十本規模の平均は、1本の外れ値で簡単に動くからです。出せる母数になった時点で、この記事を更新します。
探している基準値が見つからないとき、それは自分の調べ方が悪いのではなく、その数字が存在しないか、存在しても使えない可能性があります。 他人の平均を待つより、自分の中央値を出すほうが早く、そして判断に使えます。
まとめ
- 平均再生数は基準にならない。 当社が確認した範囲では算出母数が書かれておらず、出典にたどり着けなかった
- 再生数は分布が偏っている。292本の実測で、同一アカウント内に最大245倍の開きがあった
- 平均を基準にすると、72%を占める中間の投稿の多くが「平均以下」になる
- 使うのはアカウント内の中央値比。2.5倍以上と0.4倍以下だけを見て、真ん中は捨てる
- 中央値はバズった1本に引っ張られないので、除外の判断が要らない
- 規模の違う相手と並べるときだけリーチ率(再生数 ÷ フォロワー数)。1.0を超えうる倍率として読む
- 他人から取れるのは再生・いいね・コメントだけ。保存数は公開されていない
- 基準を作る目的は順位づけではなく直す場所を決めること。次に見るのは平均視聴時間
- 母数が小さいうちは平均を出さない。 当社も実績32本の段階では成果の平均値を公表していない