インスタの保存率の目安を探すのをやめる——自分の中央値で見る
保存率の目安として使える数値を、当社は見つけられませんでした。出典を追っても、算出の母数が書かれた元データに行き着きません。保存数は本人のインサイトにしか出ないため、第三者が業界平均を検証できないからです。この記事では、他人の基準値の代わりに自分のアカウントの保存数の中央値で判定する手順と、保存が動く2つの条件を書きます。
目次
結論:保存率の「目安◯%」は、出典にたどり着けませんでした
この記事に、保存率の目安の数値は書きません。書けるだけの裏が取れなかったからです。
当社はこの記事を書くにあたって、保存率の基準値として引用されている数値の出典を追いました。結果はこうです。
- 引用元をたどると別の記事に行き着き、その記事もまた別の記事を引いている
- 数値を出している記事はありますが、算出の母数(何アカウントの何投稿を、いつ、どう集計したのか)が書かれていない
- 元データそのものを公開しているものは、見つけられませんでした
「探したが見つからなかった」は、「存在しない」の証明ではありません。ただ、自分の投稿の良し悪しを決める基準として使うには、根拠が確認できない数字は使えません。
そして後述のとおり、保存率は業界平均を作ること自体が構造的に難しい指標です。だから代わりにやることは1つ、自分のアカウントの中央値と比べることになります。
なぜ「業界平均の保存率」は検証できないのか
保存数は、そのアカウントの本人にしか見えないからです。
Instagramで外から見える数字は、再生数・いいね数・コメント数までです。保存数は投稿画面に表示されず、本人のインサイトにしか出ません。つまり——
- 第三者が多数のアカウントの保存率を集計するには、各アカウントの中の人からインサイト画面を提供してもらうしかない
- 提供元が何アカウント・何投稿で、どんな規模のアカウントだったのかが書かれていなければ、その平均が自分に当てはまるかを判断できない
- 分母(後述)の定義が書かれていなければ、そもそも同じ計算をしているのかも分かりません
当社自身、外部のアカウントを分析するときは保存数を使っていません。使えないからです。
調査の内容
- 調査対象:日本国内のInstagramアカウント10件のリール292本(期間内の全件。抜き取りではありません)
- 期間:2025年10月28日〜2026年6月28日(約8ヶ月)
- 判定方法:アカウント内の再生数の中央値との比(2.5倍以上=伸び/0.4倍以下=沈み/あいだは判定しない)
- 判定結果:伸び49本(17%)/中間211本(72%)/沈み32本(11%)
- 分かったこと:同一アカウント内で最大245倍の開き(中央値の45.7倍〜0.19倍)。開きの中央値は57倍で、10アカウント中9アカウントが10倍を超えていました
- 母集団:別途、Instagramアカウント1,314件・16,752投稿を収集し、うち619投稿を勝ち負けラベル付きで分析しています
- 取得できない指標:保存数・プロフィール遷移・DM・予約は公開情報として取得できないため対象外
同じ人の投稿どうしでも245倍開く、というのがこの分析の結論です。他人の平均と比べる前に、自分のアカウントの中で何倍かを見たほうが、次にやることが決まります。
保存率は、分母を決めないと数字が動く
保存率は「保存数 ÷ 何か」ですが、その「何か」が2通りあります。
| 分母 | 意味 | 数字の出方 |
|---|---|---|
| 再生数(視聴回数) | 何回再生されたか。同じ人の複数回も数える | 分母が大きくなるので保存率は小さく出る |
| リーチ(届いたアカウント数) | 何人に届いたか | 分母が小さくなるので保存率は大きく出る |
同じ投稿でも、分母を変えれば数字は変わります。他人が出した「目安◯%」がどちらで計算されたか書かれていなければ、比べようがありません。
やることは2つです。
- 自分はどちらを分母にするかを1つ決めて、以後変えない(どちらでも構いません。途中で変えないことが大事です)
- 保存数は「人数に近い数字」、再生数は「回数の数字」だと自覚しておく。単位の違うものを割っているので、小数点以下の差を深追いしない
他人の基準値の代わりに使うもの——自分の中央値
基準値は借りるものではなく、自分のアカウントから作るものです。 手順はこれだけです。
- 直近の投稿の保存数を並べて、中央値を出す(本数が少ないと中央値が動くので、ある程度たまってから始める)
- 各投稿の 保存数 ÷ 中央値 を計算する
- 2.5倍以上=伸び/0.4倍以下=沈み/あいだは判定しない
- 同じことを再生数でもやる(再生数 ÷ 再生数の中央値)
- 2つの中央値比を並べて、下の表で打ち手を決める
平均ではなく中央値を使うのは、1本の大当たりに全体が引っ張られるからです。2.5倍・0.4倍という線は、当社がリール292本を判定したときと同じ線を使っています。真ん中を判定しないのは、微妙な差から学ぼうとすると偶然を法則だと思い込むためです。
| 保存が伸びた | 保存が沈んだ | |
|---|---|---|
| 再生が伸びた | 連載にする。 型・題材・冒頭の言い回しを次も使う | 持ち帰るものがない。 入口は効いている。中身に手順・一覧・数字を足す |
| 再生が沈んだ | 入口だけが弱い。 中身は触らず、冒頭の1行を書き換えて出し直す | 題材から見直す。誰の悩みに向けたかを決め直す |
いちばん取りこぼしやすいのが左下です。保存されているのに再生が伸びない回は、作り直す必要がありません。 冒頭だけ変えて、もう一度出してください。
指標全体の見方(再生・保存・フォロー・プロフィール遷移の分業や、月1回の振り返り手順)は、関連記事の「投稿の成果を数字で見る——何を測り、何を捨てるか」にまとめています。
保存が動く条件は2つ——リスト性と記念性
保存は「面白かった」では起きません。「あとで要る」か「もう一度見たい」のどちらかです。
当社が勝ちリールを解剖したところ、保存が動いていたのはこの2つに当てはまる投稿でした。
| 条件 | 中身 | 投稿の作り方 |
|---|---|---|
| リスト性 | あとで手順どおりに実行したい/その場では覚えられない | 番号を振った手順・持ち物や条件の一覧・比較表・料金や時間などの「あとで確認する数字」 |
| 記念性 | もう一度見たい/人に見せたい | 変化が画で分かる/季節・年・イベントに紐づく/その日にしか撮れない |
調査の内容
- 調査対象:伸びたリール103本(型の内訳=talk 26/howto 19/design 23/vlog 35)と、沈んだリール37本
- 判定方法:伸びた投稿と沈んだ投稿に分け、型ごとに冒頭・構成・テロップ・CTAの中身を突き合わせて対比した
- 分かったこと:狙う指標ごとに効く中身が違い、保存に効いていたのはリスト性と記念性。一方でフォローは再生数と連動しません
- 取得できない指標:保存数・プロフィール遷移・DM・予約は公開情報として取得できないため対象外。保存数の実数を持っているのは、自社アカウントを中心とした23本だけです
逆に、保存が起きなかったのは「見て終わる」投稿です。作品や写真を並べただけ、近況報告だけ、といった回は、最後に「保存してください」と言っても動きませんでした。保存はお願いで増えるものではなく、あとで要る形にしてあるかどうかで決まります。
保存を狙う回の作り方
1本の中で保存だけを狙ってください。 保存と予約を同時に言うと、どちらも取れません。
- 1本=1メッセージ。 「今日はこれだけ持ち帰って」を1つ決める。詰め込むと保存されません
- 冒頭に大きな文字を置く。 保存の前に、まず見られる必要があります。当社が解剖した勝ちリールでは、26本中25本が冒頭に大きな文字(0秒タイトル)を出していました
- テロップは1画面15字前後。 リールの多くは音が出ていない状態で見られます。画面を止めたときに読める字数にしてください
- CTAは1つだけ。理由を添える。 「保存してね」ではなく「あとで見返せるように保存してね」。動画の中に料金・予約・DM誘導などの営業の呼びかけを入れない(入れた回は伸びませんでした)
- ハッシュタグは内容に直結するものだけ、最大3個。 数合わせで関連の薄いタグを足さない
構成の目安は、手順を1画面に1つずつ置き、最後の1画面で「保存する理由」を言う形です。画面の数は手順の数で決めます(尺から割り算で決めない)。画面を止めて読み返せる状態が、リスト性そのものになります。
保存率を見るときにやってはいけないこと
母数が小さいうちに平均を出さないでください。 これは当社にも当てはまります。
| やりがちなこと | なぜ危ないか |
|---|---|
| 他人の目安と自分を比べる | 分母の定義も母集団も分からない。次の一手が出てこない |
| 数本〜数十本で平均を出す | 1本の外れ値で簡単に動く。当社も投稿実績を突き合わせられているのは32本しかないため、成果の平均値は公表していません |
| 毎日インサイトを見る | 投稿直後は変動が大きい。判定は月に1回でじゅうぶんです |
| 保存率だけで良し悪しを決める | フォローは再生数と連動しません。その回が何を狙ったかを決めてから測る |
| 保存率が低い回を作り直す | 再生が沈んでいるなら、原因は中身ではなく冒頭のことが多い |
もう1つ。保存率が上がったことを、来店や売上の代わりにしないでください。 来店は立地・価格・接客・季節にも動かされます。保存はあくまで「あとで見返す意思が発生した」ことの記録です。
まとめ
- 保存率の目安として使える数値の出典にたどり着けませんでした。母数の書かれていない基準値は使わない
- 保存数は本人のインサイトにしか出ない。第三者が業界平均を作ることも検証することもできない
- 保存率は分母(再生数かリーチか)で数字が変わる。自分の中で1つに固定する
- 基準は自分のアカウントの保存数の中央値。2.5倍以上と0.4倍以下だけを見て、真ん中は捨てる
- 保存の中央値比と再生の中央値比を並べると、直す場所が決まる。保存が伸びて再生が沈んだ回は冒頭だけ書き換える
- 保存が動く条件はリスト性と記念性。「保存してください」のお願いでは増えない
- 保存を狙う回は1本1メッセージ・冒頭に大きな文字・テロップ15字前後・CTAは1つ・ハッシュタグ3個まで
- 母数が小さいうちは平均を出さない。判定は月に1回