投稿の成果を数字で見る——何を測り、何を捨てるか
投稿の振り返りが続かない原因は、見る数字を決めていないことより、見る数字が多すぎることにあります。この記事では、まず他人からは取れない指標を捨て、残す4つの指標の役割を分け、自分のアカウントの中央値を基準に判定する手順を書きます。リール292本を全件分析したときに実際に使った方法です。
目次
結論:見る数字を4つに絞り、残りは捨てる
インサイトの数字を全部見ようとするのを、今日でやめてください。
画面には、再生数・リーチ・いいね・コメント・保存・シェア・プロフィールへの遷移・平均視聴時間・視聴維持率が並びます。毎回すべてを眺めると、どれが良くてどれが悪いのかを決められません。決められないので、次にやることも出てきません。振り返りが続かない原因は、意志ではなく数字の多さです。
この記事で決めるのは3つです。
- 捨てるもの——他人のアカウントからは取れない指標。競合と比べる目的には使えません
- 残すもの——再生・保存・フォロー・プロフィールへの遷移の4つ。それぞれ効く中身が違います
- 比べる相手——他人の平均ではなく、自分のアカウントの中央値
3つめだけ、先に理由を書きます。再生数はフォロワー規模・投稿本数・アカウントの年齢で何倍も変わる数字です。条件の違う集団の平均と自分を比べても、次に何をすればいいかは出てきません。 比較は自分の中に閉じます。
以下、この順に書きます。リール292本を全件分析したときに実際に使った方法です。
まず「測れないもの」を確定させる
捨てる作業から始めます。取れない数字を取ろうとして詰まるのが、いちばんよくある止まり方です。 最初に線を引いてください。
| 指標 | 自分のアカウント | 他人のアカウント(競合・憧れ) |
|---|---|---|
| 再生数 | 取れる | 取れる(表示されている場合) |
| いいね・コメント数 | 取れる | 取れる |
| 保存数 | 取れる(インサイト) | 取れない |
| プロフィールへの遷移 | 取れる(インサイト) | 取れない |
| DM・予約・来店 | 一部のみ | 取れない |
| 平均視聴時間・視聴維持率 | 取れる(インサイト) | 取れない |
他人のアカウントから読み取れるのは、実質「再生数・いいね・コメント」だけです。 競合分析で「あの人は保存率が高い」と書いてある記事があれば、その時点で根拠を疑ってください。当社がリール292本を分析したときも、この3つしか使っていません。
一方、自分のアカウントのインサイトは、他人より圧倒的に多くの情報を持っています。 競合と同じ土俵で比べようとして、自分だけが持っている情報を捨てないでください。
4つの指標は、別々の仕事をしている
「成果」をひとまとめにすると打ち手が出ません。 指標ごとに、効く中身が違います。
| 狙う指標 | 効く中身 |
|---|---|
| 再生 | 常識から外れた数字・題材そのものの意外性 |
| 保存 | あとで見返す価値。リスト性・手順・記念性 |
| フォロー | 悩みを言い当てる解像度。再生数とは無関係に動きます |
| プロフィールへの遷移 | 「この人は何者?」が起きるかどうか |
とくに重要なのが3行目です。フォローは再生数と連動しません。 再生が伸びた回にフォロワーが増えず、再生が地味な回に増える、ということが普通に起きます。これは失敗ではなく、その回が狙っていた指標が違っただけです。
だから振り返りの前に、「この回は何を狙ったか」を1つ決めておきます。 決めていない回は、あとから何を見ても評価できません。
1本を2つの軸で診断する
1本の出来は「届いたか」と「刺さったか」に分けて見ます。
- 届く=リーチ:再生数 ÷ フォロワー数
- 刺さる=エンゲージ:(いいね数 + コメント数)÷ 再生数
この2軸で4つに分かれます。
| 刺さった | 刺さらなかった | |
|---|---|---|
| 届いた | 成功。この型を連載にする | 釣り。冒頭は強いが中身が薄い |
| 届かなかった | 隠れ良作。中身はいいのに入口が弱い | 失敗 |
直す場所は象限で決まります。
- 届かなかった → 疑うのは冒頭(最初の1〜2秒の文言と画)とハッシュタグ
- 刺さらなかった → 疑うのは中身(持ち帰れるものがあるか、参加できる余地があるか)
いちばん取りこぼしやすいのが「隠れ良作」です。中身が良いので本人は手応えがあり、しかし数字が出ないので原因を中身に探してしまう。この象限に入ったら、中身は触らずに冒頭だけ書き換えて出し直してください。
判定は「アカウント内の中央値比」でやる
生の再生数で勝ち負けを決めないでください。 フォロワー1,000人の3,000再生と、フォロワー50,000人の3,000再生は意味が真逆です。
当社が使っている判定は、その投稿の再生数 ÷ 同じアカウントの再生数の中央値です。この比が
- 2.5倍以上 なら勝ち
- 0.4倍以下 なら負け
- その間は判定しない(棚に入れない)
真ん中を捨てるのが要点です。微妙な差から学ぼうとすると、たまたまを法則だと思い込みます。
この判定方法で実際に分析したデータ
- 調査対象:10アカウントのリール292本(全件。抜き取りではありません)
- 期間:2025年10月28日〜2026年6月28日(約8ヶ月)
- 判定結果:伸び49本/中間211本/沈み32本
- 除外:期間中の本数が10本に満たないアカウント2件(本数が少ないと中央値比が意味を持たないため)
- 判定方法:アカウント内の再生数の中央値との比(2.5倍以上=伸び/0.4倍以下=沈み)
- 分かったこと:同一アカウント内で最大245倍の開き(中央値の45.7倍〜0.19倍)。10アカウント中9アカウントで10倍を超える開きがありました
- 取得できない指標:保存数・プロフィール遷移・DM・予約は公開情報として取得できないため、この分析には含んでいません
- 別途、Instagramアカウント1,314件・16,752投稿を収集し、うち619投稿を勝ち負けラベル付きで分析しています
同じ人が出した投稿のあいだで245倍開いた、というのがこの分析でいちばん重要な結果です。差を生んでいるのはアカウントの力ではなく、1本ごとの作り方だということになります。
数字の本体は「平均視聴時間」
再生数は結果であって、原因ではありません。 原因側にいちばん近い数字は平均視聴時間です。
自社アカウントのリール23本(再生数7千〜128万)で見ると、伸びた回と沈んだ回でこう分かれました。
| 平均視聴時間 | |
|---|---|
| 伸びた回 | 16〜21秒 |
| 沈んだ回 | 7〜12秒 |
さらに、冒頭で離脱した割合が50%を超えた回は、例外なく沈んでいました。
ここから言えることは2つです。
- 冒頭は「勝ちを作る」場所ではなく「負けを避ける」場所。 冒頭が良くても、そのあと見られなければ数字は伸びません。
- 伸ばしているのは本体。 最後まで見せる構成があるかどうかが、平均視聴時間に出ます。
「冒頭2秒がすべて」という言い方は、半分だけ正しいということです。
月1回の振り返り手順
毎日見ないでください。 投稿直後の数字は変動が大きく、判断を誤ります。月に1回、次の順でやります。
- その月の全投稿の再生数を並べ、中央値を出す(平均ではなく中央値。1本の大当たりに引っ張られないため)
- 各投稿の「中央値比」を計算する(再生数 ÷ 中央値)
- 2.5倍以上と0.4倍以下だけを抜き出す。 真ん中は見ない
- 抜き出した投稿を2軸で分類する(届いたか/刺さったか)
- 伸びた回の共通点を1つだけ書き出す(型・冒頭の言い回し・題材のどれか)。2つ以上書かない
- 次の月は、その1つを意識的に繰り返す
手順5で「1つだけ」と決めているのは、複数変えると何が効いたか分からなくなるからです。振り返りは、次の1手を決めるためにやります。
数字にしないほうがいいもの
来店数と売上を、投稿の評価指標にしないでください。
来店は、立地・価格・接客・季節・競合の動きに左右されます。投稿の効果だけを切り出すことは、広告のように条件を揃えないかぎりできません。「今月は来店が減ったからリールが悪い」という判断は、ほぼ確実に間違います。
もう1つ、母数が小さいうちは平均値を出さないでください。 数本〜数十本の平均は、1本の外れ値で簡単に動きます。当社も、投稿実績のデータが揃っているのが2026年8月時点で32本しかないため、成果の平均値は公表していません。出せる母数になったら、この記事を更新します。
まとめ
- 見る数字を4つに絞る。全部を眺めると、どれが良いか決められず振り返りが止まる
- 先に測れない指標を確定させる。他人から取れるのは実質「再生・いいね・コメント」だけ
- 再生・保存・フォロー・プロフィール遷移は別々の仕事。フォローは再生数と連動しない
- 1本は「届いたか/刺さったか」の2軸で診断する。直す場所が象限で決まる
- 判定はアカウント内の中央値比。2.5倍以上と0.4倍以下だけを見て、真ん中は捨てる
- 原因にいちばん近い数字は平均視聴時間。冒頭は負けを避ける場所、本体が勝ちを作る
- 振り返りは月1回。伸びた理由は1つだけ書き出す
- 来店・売上は投稿の評価指標にしない。母数が小さいうちは平均を出さない