SNS運用は内製か外注か——3つの数字で決める判断基準
「SNSをやっといて」と言われたものの、社内に担当者もノウハウもない。かといって運用代行は月30万円からと聞く。この記事では、内製か外注かを好みではなく3つの数字で決める方法を整理します。自社の内製コストを出す計算式と、社内説明にそのまま使える比較表をつけました。
目次
「内製か外注か」の二択で考えるから決まらない
この問いが決まらないのは、選択肢が2つしかないと思い込んでいるからです。
実際には、SNS運用は工程の集まりです。ネタを探す、企画を立てる、構成を決める、台本を書く、撮る、編集する、投稿する、数字を見る、次に活かす——これらを全部まとめて「内製か外注か」で決めようとすると、どちらにも決まりません。
- 全部内製 → 時間が足りない
- 全部外注 → 費用が合わない、かつ自社の言葉が失われる
決め方は「どの工程を外に出すか」です。 そして、その判断は3つの数字でできます。
判断は3つの数字で決まる
工数・費用・成果の測り方。この3つを出せば、答えは自動的に決まります。
| 数字 | 何を出すか | なぜ必要か |
|---|---|---|
| ① 工数 | 1本あたり社内で何時間かかっているか | 内製の実コストがここから出る |
| ② 費用 | ①の時間 × 担当者の時間単価 vs 外注費 | 比較の土俵を揃える |
| ③ 成果の測り方 | 何を成果とし、誰がいつ測るか | これが無いと、内製でも外注でも改善しない |
多くの検討が止まるのは、①を測っていないからです。外注費だけを見ると高く見えますが、内製の人件費は請求書が来ないので見えません。まずここを可視化します。
自社の内製コストを出す
1本あたりの時間を工程ごとに分解して、実際に測ってください。
次の表を1週間だけ埋めてみてください。推測ではなく実測です。
| 工程 | 実際にかかった時間 |
|---|---|
| ネタを探す・企画を決める | 分 |
| 構成を決める・台本を書く | 分 |
| 撮影する | 分 |
| 編集する(カット・テロップ) | 分 |
| キャプション・ハッシュタグを書く | 分 |
| 投稿する | 分 |
| 数字を見る・振り返る | 分 |
| 合計 | 分 |
そのうえで、次の式に入れます。
内製の月額コスト = 1本あたりの合計時間 × 月の本数 × 担当者の時間単価
時間単価は、年収 ÷ 年間労働時間でおおよそ出ます(年収480万円・年1,800時間なら約2,700円)。
この数字を出さずに「外注は高い」と言わないでください。 週2本・1本3時間・時間単価2,700円なら、月8本で月64,800円です。しかもこれは担当者が本業を止めている時間なので、実際の損失はこれより大きくなります。
【注記】1本あたりの平均時間は、まだ公開されている実測値がありません
「業界平均は◯時間」という数字を探しましたが、信頼できる調査が見当たりませんでした。 当社も現時点で持っていないため、この記事では平均値を出さず、自社で測る方法だけを示しています。 (当社では今後この点を調査する予定です。出せる段階になったら本記事を更新します。)
外注の相場——公開情報から
各社が公開している料金情報を整理すると、相場はこうなっています。
| 形態 | 相場 |
|---|---|
| 運用代行(一括委託) | 月30万〜50万円 |
| 運用代行(企業向け一般) | 月10万〜100万円 |
| 特定業務のみ委託 | 月5万〜10万円 |
| フリーランスへの依頼 | 月3万〜5万円 |
※ SNS運用代行の相場を扱う公開記事4本を2026年8月時点で確認し、整理したものです(出典=アスピック/re-v/grop/influfect)。各社の実際の見積は条件で変わります。初期費用の相場は、裏の取れる出典が手元にないため載せていません。
注意点が2つあります。
① 同じ「月30万円」でも中身が違います。 投稿本数、撮影の有無、レポートの有無で範囲が大きく変わります。必ず「月何本」「撮影は含むか」「レポートは出るか」で揃えて比較してください。
② 安い方に寄せると、企画が薄くなります。 月3万〜5万円のプランは多くの場合「投稿代行」で、何を投稿するかは自社で決めることになります。それは工数が減っていません。
第3の型——企画だけ外に出す
中小企業のSNS運用では「戦略は外注、運用は社内」というハイブリッドが現実的な最適解になるケースが多い——これは複数の運用支援会社が公開している見解で、当社の実感とも一致します。
工程で分けると、こういう形です。
| 工程 | 誰がやるか |
|---|---|
| ネタを探す・企画を立てる | 外 |
| 構成・台本を書く | 外 |
| 撮る | 社内 |
| 投稿する | 社内 |
| 数字を見る・次に活かす | 外 |
なぜ撮影と投稿を社内に残すのか。 事業者本人の顔と言葉が入っている投稿のほうが届くからです。ここを外に出すと、綺麗だが誰の声でもない投稿になります。
なぜ企画を外に出すのか。 ここが最も時間を食い、最も属人化し、最も学習コストが高い工程だからです。上の工数表を埋めると、たいてい「ネタを探す・企画を決める」と「台本を書く」で半分近くを使っています。
3つの型の比較——社内説明にそのまま使える
稟議で聞かれるのは、費用・工数・成果の測り方の3点です。 そのまま貼れる形にしました。
| 全部内製 | 全部外注(運用代行) | 企画だけ外注 | |
|---|---|---|---|
| 費用の目安 | 人件費のみ(上の式で算出) | 月10万〜100万円 | 月3万〜10万円台 |
| 社内の工数 | 全工程 | ほぼゼロ(確認のみ) | 撮影・投稿のみ |
| 立ち上げ速度 | 遅い(学習が必要) | 速い | 速い |
| 自社の言葉が残るか | 残る | 薄れやすい | 残る(撮るのは社内) |
| ノウハウが社内に貯まるか | 貯まる | 貯まりにくい | 部分的に貯まる |
| 成果の測り方 | 自社で設計が必要 | 委託先のレポート | 委託先のレポート+自社 |
| 担当者が辞めたら | 止まる | 止まらない | 止まらない |
| 向く規模 | 専任者を置ける | 予算がある | 専任者を置けない |
「担当者が辞めたら止まるか」の行は、稟議で効きます。 内製の最大のリスクは費用ではなく、属人化です。
それぞれが向かない人
正直に書きます。どの型にも向かない場合があります。
| 型 | 向かない場合 |
|---|---|
| 全部内製 | 専任者を置けない。担当者が兼任で、SNSが後回しになる構造がある |
| 全部外注 | 事業者本人の人柄・専門性が売りの業種。外注すると「誰の投稿か分からない」状態になる |
| 企画だけ外注 | 撮影する人が社内に確保できない場合。 撮る工程は残るので、そこが回らないなら意味がありません。また、投稿を完全に手放したい場合も向きません |
3つ目は当社が提供している形ですが、撮る人がいない会社には向きません。そこは正直に申し上げます。
選定時に必ず確認する3点
外注先を選ぶとき、比較サイトの評点より先に、この3つを聞いてください。
① 実績を、フォロワー増加以外で説明できるか
フォロワーが増えた話しか出てこない場合は要注意です。問い合わせや売上への貢献をどう捉えているかを聞いてください。
② KPIを明示するか
「何をもって成功とするか」を先に握らない相手とは、あとで必ず揉めます。
③ 月次レポートが出るか。そこに何が書かれるか
レポートの有無だけでなく、中身のサンプルを見せてもらってください。 数字が並ぶだけで「次に何をするか」が書かれていないレポートは、読む時間の分だけ損です。
そしてもう1つ。具体的な数字で答えられない相手、「守秘義務があるので言えません」で終わる相手は避けてください。 守秘義務があっても、範囲や方法論は説明できます。
まとめ
- 「内製か外注か」の二択で考えるから決まらない。どの工程を外に出すかで考える
- 判断は工数・費用・成果の測り方の3つの数字で決まる
- 検討が止まる最大の理由は、内製の工数を測っていないこと。人件費は請求書が来ないので見えない
- 外注の相場は月10万〜100万円(一括委託で月30万〜50万円)。「月何本」「撮影の有無」「レポートの有無」で揃えて比較する
- 第3の型は企画だけ外に出す形。撮影と投稿を社内に残すと、自社の言葉が残る
- ただし撮る人が社内にいない場合は、この型は向かない
- 選定時は「フォロワー以外の実績」「KPIの明示」「レポートの中身」を必ず確認する