リールの再生回数が伸びない原因を、4段階で切り分ける
再生回数が伸びないとき、多くの人は編集や機材から疑います。しかし原因はもっと上流にあることが多く、順番を間違えると直す場所を見誤ります。リール292本の分析と自社リール23本の数字をもとに、①届いたか刺さったか ②冒頭で落ちていないか ③本体のどこで落ちているか ④題材、の順で原因を1つに絞る診断手順を示します。直すのは、絞り込んだ1箇所だけです。
目次
結論:原因は4段階のどこかにあり、上から順にしか特定できない
再生回数が伸びない原因は、次の4段階のどこか1つにあります。上から順に見てください。
| 段階 | 何を見るか | 原因だった場合に直す場所 |
|---|---|---|
| 段階1 | 届いたか/刺さったか | この段階では直さない。次にどこを見るかが決まる |
| 段階2 | 冒頭で落ちていないか | 冒頭の1〜2秒(文言と画) |
| 段階3 | 本体のどこで落ちているか | 構成・1カットあたりの情報量 |
| 段階4 | 題材そのもの | 企画(何について話すか) |
この順番を飛ばすと、直したのに数字が動かない、という結果になります。 冒頭で半分が落ちている投稿の題材をいくら変えても、落ちる場所は変わりません。逆に、冒頭も本体も問題がないのに題材を変えずにいると、何度書き直しても頭打ちになります。
以下、1段階ずつ判定方法を書きます。使うのは自分のアカウントのインサイトだけです。
診断の前に——「伸びていない」かどうかを先に確定させる
診断を始める前に、その投稿が本当に沈んでいるのかを確定させてください。 ここを飛ばすと、正常な投稿を直しにいくことになります。
判定は生の再生数ではやりません。その投稿の再生数 ÷ 自分のアカウントの再生数の中央値で見ます。
- 0.4倍以下 = 沈んだ投稿。診断の対象
- 2.5倍以上 = 伸びた投稿。診断ではなく、再現材料として扱う
- その間 = 判定しない。診断の対象にしない
真ん中を診断しないのが要点です。わずかな上下から原因を探すと、たまたまを法則だと思い込みます。
調査の内容
- 調査対象:日本国内のInstagramアカウント10件が投稿したリール 292本(2025年10月28日〜2026年6月28日の全件。期間内の投稿が10本未満のアカウントは除外)
- 判定方法:アカウント内の再生数の中央値との比。2.5倍以上を伸び、0.4倍以下を沈み、その間は判定しない
- 判定結果:伸び 49本(16.8%)/中間 211本(72.3%)/沈み 32本(11.0%)
- 分かったこと:同一アカウント内で最大245倍の開き(中央値の45.7倍〜0.19倍)。開きの中央値は57倍で、10アカウント中9アカウントが10倍を超えました
- 取得できない指標:保存数・プロフィール遷移・DM・予約は公開情報として取得できないため対象外
- 別軸として、Instagramアカウント1,314件・16,752投稿を収集し、うち619投稿を勝ち負けラベル付きで分析しています
同じ人が、同じ商材で出した投稿のあいだで245倍開いていました。 フォロワー数も機材も編集スキルも固定されている条件下でこれだけ割れる以上、原因は投稿ごとに変わるものの中にしかありません。診断できる、ということです。
段階1:届かなかったのか、刺さらなかったのか
最初にやるのは、原因を2つに大分類することです。ここでは何も直しません。
沈んだ投稿について、2つの数字を出します。
- 届いた量= 再生数 ÷ フォロワー数
- 刺さった率=(いいね数 + コメント数)÷ 再生数
この2つを、同じアカウントの過去投稿と比べます(他人の数字と比べません)。組み合わせで、次に見る段階が決まります。
| 刺さった率がふだん通り | 刺さった率が低い | |
|---|---|---|
| 届いた量がふだん通り | この組み合わせはほぼ起きません。中央値比を計算し直してください | 段階3・4へ(本体か題材) |
| 届いた量が低い | 段階2へ(冒頭) | 段階4へ(題材から疑う) |
読み方は単純です。
- 届いていないのに、見た人の反応は悪くない → 入口だけが弱い。冒頭を疑います
- 届いてはいるのに、反応が薄い → 入口は機能している。中身を疑います
- どちらも低い → 入口と中身の両方が悪いのではなく、そもそも題材が興味を持たれていないと考えたほうが早く直ります
いちばん取りこぼしやすいのが左下(届いていないが刺さっている)です。本人には手応えがあるので、原因を中身に探してしまいます。この型に入ったら中身は触らず、段階2だけをやってください。
段階2:冒頭で落ちていないか
冒頭は「勝ちを作る場所」ではなく「負けを避ける場所」です。 ここで落ちていたら、その先を直しても数字は動きません。
自社アカウントのリール23本(再生数7千〜128万)を見たところ、冒頭で離脱した割合が50%を超えた回は、例外なく沈んでいました。ここに当てはまるなら、原因は冒頭で確定です。他を見る必要はありません。
調査の内容
- 調査対象:自社アカウントで投稿したリール 23本(再生数7千〜128万)。インサイトの数値を保有している全件
- 判定方法:伸びた回と沈んだ回に分け、平均視聴時間と冒頭離脱の割合を対比
- 分かったこと:平均視聴時間は伸びた回 16〜21秒/沈んだ回 7〜12秒。冒頭離脱が50%を超えた回は例外なく沈んだ
- 取得できない指標:来店・予約・売上は投稿1本ごとに紐づけられないため対象外
冒頭離脱の見方:インサイトで視聴の維持を示すグラフが見られる場合は、最初の1〜2秒の落ち込みを見ます。グラフが見られない場合は、平均視聴時間 ÷ 動画の尺を出して、自分の過去投稿どうしで比べてください。絶対値の基準は持たなくてよく、自分の中で低い回が冒頭で落ちている回です。
冒頭が原因だと分かったときに直すのは、次の2つだけです。
- 0秒の時点で大きな文字が出ているか。 当社が解剖した勝ちリールでは、26本中25本が冒頭に大きな文字を置いていました
- その文字が、何について話すのかを示しているか。 対象を示さずに引っ張る書き方は沈んだ側に集中していました
型の一覧まで踏み込むと診断が止まります。ここでは「冒頭が原因かどうか」を確定させ、1行だけ書き換えて出し直すところで止めてください。撮り直しは不要です。
段階3:本体のどこで落ちているか
冒頭を通過しているのに沈んでいるなら、原因は本体の構成です。 判定に使う数字は平均視聴時間です。
自社リール23本では、伸びた回の平均視聴時間が16〜21秒、沈んだ回が7〜12秒でした。冒頭離脱が50%を超えていないのに平均視聴時間が短い場合、中盤で落ちています。
中盤で落ちる原因は、ほぼ次のどれかです。
| 症状 | 原因 | 直し方 |
|---|---|---|
| 前半で言いたいことが終わっている | 結論を出したあとに補足が続いている | 結論を最後に置き直すか、補足を切って尺を短くする |
| 1カットに情報を詰めすぎている | 1カットで2つ以上のことを言っている | 1カット1メッセージに割る |
| 文字が読み切れない | テロップの字数が多い | 1画面15字前後に収める。改行は文節で入れる |
| 話しているうちに尺が足りなくなる | セリフの字数と尺が合っていない | セリフの字数 ÷ 5.9(1秒あたりの字数) でカット秒を出し直す |
最後の行が、いちばん見落とされます。尺から逆算せずにセリフを書くと、後半が早口になるか、間延びします。 どちらも離脱の原因です。台本を書く段階で「このカットは何秒か」を出しておくと、撮影後に気づく事故が減ります。
カット数を尺の割り算で決めないでください。 尺を等分してカット数を先に決めると、話の切れ目とカットの切れ目がずれます。話の役割が変わるところで割るのが正しい順序です。
中盤を保つ8つの装置——維持はカット密度では作れない
中盤の離脱を止めるのは、テンポの速さではありません。 当社が勝ちリール103本を解剖して出した結論は、中盤の維持を作るのは次に新しい情報が来ると予告することと、感情の起伏が交互に来ることの2つで、カット密度では代わりにならない、というものでした。段階3で「中盤で落ちている」と分かったときに、この2つが入っているかを数えます。
中盤に置けるのは、次の8種類です。1本に全部入れるためではなく、その題材に何個置けるかを数えるための一覧として使ってください。
| 装置 | 中盤で何をするか |
|---|---|
| 1. 人間味イベント | 想定外のことが起きる。段取り通りにいかなかった場面をそのまま残す |
| 2. 前進感表示 | いま何番目かが分かる。「3つのうち2つ目」を画面か口で示す |
| 3. 列挙予告 | 「3つあります」と先に言う。いくつ来るのかを最初に出す |
| 4. 質問代弁 | 見ている人の疑問を、本人より先に口にする |
| 5. 対比連打 | before/afterを短く繰り返す |
| 6. 感情の合いの手 | 驚き・実感の一言を挟む |
| 7. 比喩 | 相手がすでに分かっているものに例える |
| 8. 実演ホールドの緩急 | 見せ場でいったん止める。最初から最後まで動かし続けない |
8種類の枠は業種を問いませんが、中身は置き換えが要ります。 何を人間味イベントにするか、何と何を対比するかは、扱う商品と客層で変わります。枠はそのままに、例だけを自分の現場の言葉に入れ替えてください。
尺は、置ける装置の数で決めます。 尺を先に決めて中身を詰めるのではなく、順番が逆です。
| 置ける装置の数 | 尺の目安 |
|---|---|
| 1〜2個 | 20秒前後 |
| 3個以上 | 30〜48秒 |
| 0個 | 長尺にしない。装置を1つも置かないまま尺を伸ばした回は、維持率21%で最下位でした |
前の段階と合わせると、カットの割り方は話の役割で決め、尺の長さは装置の数で決める、という分担になります。企画の段階で「この題材に装置を何個置けるか」を数えておくと、撮ったあとに尺を持て余しません。
段階4:題材そのものを疑う
段階1〜3で問題が見つからなければ、原因は作り方ではなく企画です。 ここまで来て初めて題材を疑います。
判定はシンプルです。その投稿について、次の1文を埋めてください。
この動画は、(誰)が(どんな場面)で困っていることに答えている。
埋まらないなら、題材が原因です。 埋まるのに沈んだ場合は、その「誰」が自分のフォロワーの中にほとんどいない、ということです。
沈んだ側に共通していたのは、視聴者にとっての意味に翻訳されていない題材でした。具体的には次のようなものです。
- 自己紹介・初投稿・近況報告——発信者への興味がまだない段階で、発信者の話をしている
- その日の出来事をそのまま流す——視聴者の利益に変換されていない
- 商品名やスペックだけ——名前を知らない人には情報がゼロ
- 告知・予約案内・内輪の話——すでに興味がある人にしか意味がない
題材を変えるときは、思いつきで1本ずつ変えないでください。 勝ちリール103本を型ごとに解剖すると、talk(語り)26本・howto(手順解説)19本・design(作品や仕上がりを見せる)23本・vlog(日常記録)35本に分かれ、型ごとに効く作り方が違いました。型を固定したまま題材だけを3つ並べて、同じ型で3本出す。 これで初めて、題材の差が読めます。
疑わなくていいもの——誤診が多い5つ
次の5つは、原因として挙がりやすいわりに、手元のデータでは説明がつかないか、そもそも検証できません。 診断の対象から外してください。
| よく疑われるもの | 外していい理由 |
|---|---|
| フォロワー数 | 同一アカウント内、つまりフォロワー数が固定された条件で最大245倍割れていました。フォロワー数では説明できません |
| 機材・編集の作り込み | 同上。同じ人が同じ環境で撮った投稿どうしで割れています |
| 投稿時刻 | 当社は投稿時刻を勝ちパターンの判定材料に使っていません。記録が自己申告で、裏が取れないためです |
| ハッシュタグの数 | 数を増やすと結果が変わるかを測ったデータを、当社は持っていません。台本では内容に直結するものだけを最大3個に絞り、数での調整はしていません |
| アルゴリズム | 外から検証する手段がありません。同一アカウント内で比べるのは、アカウント側の条件をそろえて投稿ごとの差だけを見るためです |
「アルゴリズムが変わったから」で止まると、そこで診断が終わります。 変わったかどうかを確かめる手段がない以上、変えられる場所(冒頭・構成・題材)から順に潰すほうが早く動きます。
診断の早見表
ここまでを1枚にまとめます。 沈んだ投稿を1本選び、上から順に当てはめてください。
| 見つかった症状 | 原因の段階 | 次にやること(1つだけ) |
|---|---|---|
| 中央値比が0.4倍〜2.5倍のあいだ | — | 診断しない。 対象から外す |
| 届いた量が低く、刺さった率はふだん通り | 段階2 | 冒頭の1行を書き換えて出し直す |
| 冒頭離脱が50%超 | 段階2 | 0秒に大きな文字を置き、対象を示す |
| 冒頭は通過、平均視聴時間が短い | 段階3 | 1カット1メッセージに割る/テロップを15字前後にする |
| 尺と話す量が合っていない | 段階3 | セリフの字数 ÷ 5.9 でカット秒を出し直す |
| 中盤に維持装置が0〜1個しかない | 段階3 | 装置を数え直し、装置の数に合う尺(1〜2個=20秒前後)に詰める |
| 届いた量も刺さった率も低い | 段階4 | 「誰が・どんな場面で」の1文を埋め直す |
| 段階1〜3に問題なし | 段階4 | 型を固定したまま、題材を3つ並べて3本出す |
一度に1箇所しか直さない
同時に2箇所以上を変えないでください。 変えた場所が2つあると、次に数字が動いたときに、どちらが効いたのか分かりません。
手順はこれだけです。
- 沈んだ投稿を1本選ぶ(中央値比0.4倍以下のもの)
- 早見表で段階を1つに絞る
- その段階の項目だけを直して出し直す
- 中央値比で判定する。判定は1本では決めず、同じ直し方で3本出してから見る
手順4が要点です。1本で判断すると、たまたまの上下を成果だと誤解します。同じ直し方を3本続けたときに中央値比が上がっているかどうかで判断してください。
この診断で分からないこと
正直に書きます。この手順で分かるのは「どこまで見られたか」までです。
| 分からないこと | 理由 |
|---|---|
| 予約・購入・売上に効いたか | 保存数・プロフィール遷移・DM・予約は他アカウントからは取得できず、自社の投稿でも来店との紐づけができません |
| 冒頭が唯一の原因かどうか | 292本の分析は、本編の構成・音源・投稿時間などを統制していません。言えるのは対応関係があるところまでです |
| 日本のリール全体の傾向かどうか | 対象は10アカウント292本です。代表標本ではありません |
| 成果の平均値 | 投稿実績のデータが揃っているのは2026年8月時点で32本のみです。母数が小さいため平均値は出していません |
「見られた」と「予約が入った」は別の話です。この診断は、見られない原因を1つに絞るためのものです。
まとめ
- 原因は4段階のどこかにある。上から順にしか特定できない
- 診断の前に、中央値比0.4倍以下かどうかで対象を確定させる。真ん中は診断しない
- 段階1:届いた量と刺さった率で大分類する。ここでは直さない
- 段階2:冒頭離脱が50%を超えていたら、そこで確定。0秒に大きな文字があり、何の話かを示しているかを見る
- 段階3:平均視聴時間が短ければ本体。1カット1メッセージ・テロップ15字前後・字数÷5.9でカット秒
- 中盤の維持は新情報の予告と感情の起伏の交互で作る。カット密度を上げても代わりにならない(維持装置8種)
- 尺は置ける装置の数で決める。1〜2個=20秒前後/3個以上=30〜48秒。装置なしの長尺は維持率21%で最下位
- 段階4:「誰が・どんな場面で」の1文が埋まるか。型を固定して題材を3つ比べる
- フォロワー数・機材・投稿時刻・ハッシュタグの数・アルゴリズムは診断の対象から外す
- 一度に1箇所しか直さない。 判定は1本ではなく3本出してから